平成30年3月11日
震災7年目が過ぎ・・・感謝と決意
世嬉の一酒造株式会社
代表取締役社長 佐藤 航
スタッフ一同
3月10日、震災の年に生まれた次女の卒園式でした。
7年前の震災発生後、混乱しているお客様とスタッフを中庭に誘導し落ち着かせようとしていました。その時、妊娠8か月のおなかの大きな家内が90歳になるおばあちゃんと3歳になる長女の手を引き裸足で私たちのところに逃げて来たことを思い出します。
責任者という立場である以上、お客様やスタッフに責任をもってやらなければならないと思うものの、家族にすぐに駆け付けていけなかった自分の行動が正しかったか・・・いまだ大きな悔い共に7年が過ぎました。
90歳すぎたばあちゃんも天寿を全うし、また、家内もおなかいた子供も昨日元気に卒園式に参加している様子を見て救われる気持ちになりました。
あれから7年、毎年この日が来るとあっと言う間だと思いつつも、昨日のように思い出す日もあります。それは必ずしもつらい日々の思い出ではなく、同業者、お客様、多くの人から応援と支援をいただいた心が温かくなる思い出でもあります。
沖縄からスタッフ全員分にと四葉のクローバーをしおりにして送ってくれたご家族。
お客様の写真とメッセージを送ってくれた飲食店の方々。
商品はいつでもいいと言ってお金だけ振り込んでくれたお客様。
ファンドを通じて復興支援していただいたお客様。
多くの人々から様々な温かい愛情をもっとも感じた時期だったと思います。
そういう意味で、誤解がないようにお願いしたいのですが、つらくとも最も幸せを感じた日々でもあります。
また、震災は私の経営指針を決意した日でもありました。故船井幸雄先生の言葉「過去オール善・・・すべての過去を肯定的に受け入れ、よりよい未来になるために行動しなさい」という言葉が常に頭に浮かんできました。それ以来、30年後の自分が「あの震災があったおかげで世嬉の一酒造は成長できた、お客様に幸せを届けられる企業になれた」と言えるようになろうと決意しました。
まだまだ、様々な問題山積みの世嬉の一ですが、少しづつそのような形に向かっていると思います。
私ども世嬉の一酒造は、震災後経営理念を整えました。当社の名前の由来「世の人々が嬉しくなる一番の酒造りを目指す」という事を踏まえ、『幸せ創造企業』だと位置づけています。
世嬉の一の定義する幸せを3つに因数分解していました。「1.お客様の幸せの創造」 「2.社員の成長」 「3.地域が豊かになる」ことです。
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の「お客様の幸せの創造」は、商品品質の向上と心温まるサービスを行う事。常に新しいことを考えチャレンジすることです。現在商品づくり、業態づくり、イベントづくりなどで生かされています。まだまだお客様に叱咤激励を受けながら進んでいますが、一生努力する課題です。
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の「社員の成長」は、私はスタッフ自身の人生が豊かになってほしいと願っていることから生まれました。私たちはまだまだ零細企業ですので、給与や福利厚生でスタッフの幸せを追求できません。そこで、スタッフ一人一人が人間的も成長を実感出来る企業になれば、幸せになると信じて様々な事を行っています。一つは地元の高校生をちょっと無理してでも毎年採用しています。最初はなかなかうまくいかなかったのですが、徐々に効果が表れスタッフが育ってきました。また、若い子にも新しいことにどんどんチャレンジしてもらうように入社1年未満の子たちで新規店舗カフェ「TheBREWERS平泉」を創り、運営してもらっています。新しい業態でチャレンジしている姿は徐々に成果になってきていると思います。
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地域が豊かになる事に関しては、世嬉の一は地域に根差した企業ですので、地域が発展するためにスタッフと時間を使っています。例えば震災後一関の餅食文化を広めるため、様々な活動を通して町おこしを行い成果が出てきました。また、震災後地元の経営者たちと街づくり会社の設立が4月からスタートします。そのほか東北のブルワー達と勉強会を開催するなど震災後多くの新しい仲間たちとも協力して豊かな地域づくりを行っています。
今日も世嬉の一ではいまだに震災の復興工事(蔵の修繕工事)が続いています。
この蔵の風景は世嬉の一のものではなく、一関の風景。道を通る地域の方々の風景として修復しています。孫の世代にこの風景を残すために行っています。
世嬉の一では、東日本大震災でお亡くなりになられた尊い方々のご冥福をお祈りしつつ、つらい思い出だけを思い出す日ではなく、日本全国からいただいた大きな愛情を感じつつ、未来につなげるための1日にしたいと思います。7年たっていまだ色あせない複雑な思いを胸に秘めつつ今日から素敵な未来を創造していきたいと思います。
このような考えに至ることができるのも、震災からずっと支え続けて頂けるお客様、お取引様があるからです。皆様、本当にいつもご支援いただきありがとうございます。
これからもなにとぞよろしくお願いします。